日曜日, 11月 09, 2014

白いケミカルレース

基本的に天然素材がスキではあるのだけれど、ポリエステルとアクリル毛糸のふわふわセーターとかケミカルレースもスキだ。

長年使った結果、耐久性があるし、摩耗しないし、ケミカルレースは、切りっぱなしでもほつれない。

強靭さ、汚れ落ちの良さ、発色の白さ、見た目の細かさ、そして、チープ感がスキ。

今日、IMSに手芸材料を買いに行って、荒木経惟の「左眼ノ恋」という展示があることを知って、見てみた。

入場料が400円【一般】で、11月24日まで、そのチケットと本人確認ができるものを見せれば、何度でも入場できる。

小さい会場での展示だったけれど、とても印象的だった。

アラーキーさん、右目の視力をなくされたから、左眼ノ恋(セーヌ川左岸の恋)なのかあ。

左半分の色彩がビビッドで、右半分が黒く塗りつぶされた写真。リアルに両眼で見ようとするとそんな感じなのかな。色彩のナマナマしさが残像する。

私はモノクロ写真の方がスキだったけれど、それも、左半分はクリアなポートレート風のクローズアップ写真で、右半分は霞んでぼやけた感じの遠景写真の組み合わせだった。

その中で印象的だったのは、モデルのローラちゃんの眼とタクシーの助手席のヘッドレストのケミカルレースでできたカバー。

ケミカルレースは、レースの模様が複雑で、チープで、白い。

父が車を買い換える度に、セールスマンが来て、値切られ交渉の最後に、では、シートカバーもおつけしますんで、で決着をみていたような記憶がある。(最後の落としどころがそれかい?どうでもいいじゃん、そんなもの、って思いつつ、もれ聞いていたのだが。)

なんとなく、クリスマスあたりには、温かそうでありながら、チープな感じの、色彩を持たない人工素材の服を来て、街のイルミネーションなんかに染まってみたいと思った。

今日は、”あえて”膨張して見えるふわふわのケミカル毛糸のセーターを着て、天然素材のお店に入って行ったりもしたのだけれど、作り手の良心的な、いいモノのいいモノヅラが、ちょっと威圧的に思えたりもした。(安モノと輸入モノで身を固めている私のひがみかしらん?)

大衆品の放つ、安定的で堅牢な美しさ、ってのもある。アラーキーさんは、作風は、過激じゃなくて、金目のモノゴトを撮るわけでもないし、とても上品に思えた。

天然素材たる人は儚く、腐ち易いけれど、ケミカルレースのように、ずっとずっと愛着は残る。そんな感じがした。