木曜日, 3月 08, 2007

★Perfume: the story of a murderer


昨日、映画:『パフューム ある人殺しの物語』を見た。http://www.perfumemovie.com/

匂いたつような映像表現とベルリンフィルのサウンドが素晴しい作品。

パフューム(香水)というタイトルなんですが、芳香ではなくて、悪臭を含めたあらゆる匂いと主人公が匂いをトレースする様を映像化・音像化している、しようとしている。スピルバーグもスコセッシも、映像化権を得ようと動いたらしくて、映像化権を取れなかったスピルバーグも助言しているのだそうだが、何なんでしょう?裸体の撮影の仕方かな?エロでもなく、グロでもなく、美しい。
フランスのお話なのに、なぜ台詞は英語なのさ?と不満なんですが、よくよく思い返して考えると原作者はドイツ人でドイツ語で書いているのですよね。だから(?)台詞が英語なのかしらね。フランス人が書いた物語じゃないので、そういうことになっちゃったんでしょう。

先日観た『ダーウィンの悪夢』と同様の魚のアラとか腸(はらわた)の腐臭が目をさすような映像もある。映画の前半の中盤に出てくるダスティン・ホフマンが、もう80歳であるという事にはビックリ。80歳には見えない、相変わらずな役どころ。本当にキレイな女の人が、たくさん何げに出てきます。

映画のあらすじを述べてしまうと面白くないので、以下は、JIJIちゃんの香りにまつわる思い出エトセトラが主です。

原作の小説は、日本語訳で20年ちかく前に読んでいたから、なおさら興味津々。当時JIJIちゃんは松山に住んでいて、エッセンシャルオイル(植物の香りの精油)とスパイスと花びら等から成るポプリ製作に夢中でした。

図書館で香りに関する本を物色していたら、ハーブ研究会(同好+研究の会)の師匠というか、リーダーのキエさんが、これ面白いわよ!と勧めてくれたのが、この映画のお話。

キエさんは、嗅覚のというか、嗅覚的なセンスの持ち主だった。ポプリのレシピを作るイマジネーションに長けた人だったなあ。JIJIちゃんは、鼻炎持ちだし、嗅覚はイマイチ。あなたって、はっきりした香りが好きよね!と言われたような記憶があるけど、それは、私の嗅覚が弱いからだろうなあ。

この作品の主人公のようなやり方は犯罪であるので論外ですが、人は、様々な方法で、良い香りを留め置きたいと思うもの。良い香りが思い起させてくれる幸せな瞬間をお取り置きするために、それを、時々、ひっそり楽しむために。

人体の香りを採取されるってのは、エロい中のエロい。香水をつけていて、男の人に『いい匂いだね』なんて、いきなり言われちゃうことはありますが、それでも、う~ん、なんだか嫌だな。(そんじゃあ、香水をつけるなよ!と言われてもしかたがないかも。)匂いを嗅がれちゃったんだなって思って、かなりドギマギするし、悔しいかも。怖いかも。この映画の中でも、女の人がぎょっとして、What do you want? 何なのよ!(だったと思う)って言う場面がある。

しかし、JIJIちゃんは、匂いをかぐのは好きで、かつて、香りをどうにかして留め置きたいと思ったことも度々ある。バラの花びらからバラの香りを。バラの花びらを乾かすと、濃いバラの香りのポプリが出来るような気がするけれど、そう上手くいかない。大量のバラの花びらを乾燥させても、バラの芳香は揮発してしまい、後には色あせ干からびた花びらが、芋っぽい匂いに変わって、残るだけ。

蒸留したり、脂肪に香りを吸着させて蒸留して取り出したりした香りの成分の精油でも、その瓶の蓋をあけておけば、やはり揮発してしまい、徐々に香りは薄くなるもの。

揮発性の香りを長く閉じ込めておくには、ポプリの場合、オリスルートという保留材が使われる。それでも香りは薄れゆく。素材には、香りをとどめ易いものと、そうでないものがあるようだ。

この映画の中にも出てくるけど、香水のそもそもの目的は、臭いものに蓋をするため、悪臭を忘れるため。臭い臭いなめし革に香りをつけて、嫌な匂いを消すことだ。パリでも、香料の産地の南仏のグラースでも。

皮の匂い消しのための香水でもあるのですが、皮という素材は香水の香りを末永くとどめておく力もあるってことをJIJIちゃんは体験しましたね。上の怪しげな写真は、JIJIちゃんのお気に入りの『ミツコ』という香水の香り付きの皮手袋と、オレンジにクローブをさしてスパイスの粉をまぶしたポマンダー。手袋は20年以上まえのもの。ポマンダーも足掛け20年の年代もの。

両方ともに今でもいい香りがする。

手袋は、JIJIちゃんの小さい手のサイズにぴったりで第二の皮膚と言ってよいぐらいのもの。このお気に入りの手袋をカバンの中に入れて持ち歩いていたら、ポーチの中の香水瓶の蓋があいて香水まみれになっちゃったわけですが、怪我の光明というか、ずっとずっとその甘い香りが残ってお気に入りの逸品です。

ポマンダーは、オレンジのミイラのようなものです。作りたての状態では、丸ごとのオレンジの水分と香りがグローブの毛細管現象(?)で吸い上げられて香りたち、それはそれは、甘い甘いフレッシュな香りでしたが、今もオレンジとシナモンとクローブと、その他諸々の、エキゾチックな香りがほのかに香ります。

香りは、それにまつわる様々な思い出を連れてくる。両方ともJIJIちゃんの宝物です。