神戸に新開地(しんかいち)というところがあるのだけれど、「しん・かいち」というよりも、「しんか・いち」あるいは、コアなヒトは「しんかぁー」と言っていた福原の色街。コドモ心にもなんかそんな感じがしたなあ。
そこに、コドモの頃から家族でよく行っていた鉄板のお好み焼き屋さんがあった。美丁(よしちょう)という名前の比較的高級なお好み焼き屋さん。他の目的は一切なくて、目的はお好み焼き。
現在、自分で、自宅で、お好み焼きを焼く時は、その店の味を再現したいなあ~と強く思うのだけれど、実際はちょっと違うなあ。
長芋をすって生地に混ぜると適当に生地がふんわりするので、長芋に頼りっきりな、少し柔らかめの粉少なめの、それなりに美味しいお好み焼きを焼いて食べている。生地の野菜は、キャベツにすることもあるし、キャベツとネギの時もあるし、ネギ焼きにすることもある。
美丁(よしちょう)で美味しかった牡蠣とか肝(鳥レバー)入りのお好み焼きは良く作る。肝焼きは、他のお店では見かけないけれど、お好み焼きに鳥レバー入れると美味しい。レバーそのものが好きなので、私は好きだ。
私の記憶では、美丁(よしちょう)は、大きめのお店で、アイランド型かコの字型の白木のカウンターの向こうに銀色に輝くピカピカの鉄板があり、その向こうにとても色白でぽちゃっとした感じの肌の綺麗なお姉さんがいて、お好み焼きや焼きそばやお豆腐と春菊やもやしを焼いたものを作ってくれた。熱い鉄板の上でお豆腐が踊るようにブルブル焼けて、お姉さんがさっと小さめのフードをかけて春菊を投入し、蒸し焼きになる様を見るのが好きだった。
お姉さんは、私が小学校4年生の時の担任の先生に顔が似ていて、色白で美肌。もち肌だった。髪型は天地真理に似ていたけど目は小さめ。
お姉さんは、無駄口をたたくことなく、ひたすら鉄板に向かっていたけれど、ふんわりしたオーラがあって、声も良かった。
鉄板から立ち上る湯気がお肌によいのか、10年以上、折に触れて(?)家族で通ったけれど、彼女にはお肌の劣化がなくて、いつ行ってもビジュアルが一定だった。父がお姉さんのファンだった。いつ行ってもぽちゃぽちゃで変わらへんなあ~と言っていた。会話がはずむわけでも、お店の外でアフターがあるわけでも一切なかったけれど。お姉さんはある種の女神だった。
お好み焼きの生地には、山芋系は多分入れてないと思うのだけれど、美味しかったんだなあ。
各具材別のお好み焼きには、「粉焼き」と「卵焼き」の2種類があった。「粉焼き」は粉っぽくないけど、卵無しで白い。どういう配合なのか、今となっては謎だ。肝焼きとかステーキ肉っぽい牛肉やタコや牡蠣のお好み焼きは、「粉焼き」の方が好きだった気がする。「卵焼き」でも美味しいのだけれど。
特に「粉焼き」を再現したいのだけれど、組成が、配合が、謎だ。願わくは、もう一度食べたい。
「肝焼きを粉焼きでぇ~」と言うと、材料を用意する人に「肝焼き、お粉でぇ~」と指図される際の言い方、色っぽい感じのやさしめの声、が良かった。
美丁は、キャベツの刻み方が細かい。お好み焼きの大きさが小ぶり。
お姉さんがテコを液体(多分オイル系)に浸してテコの角からお好み焼きの上に垂らす所作、テコでふんわり丸く形を整える所作が美しかった。
阪神大震災の震災でお店がなくなっちゃったらしいのだけれど、今ごろ言うのもなんなんだけど、お姉さんは大丈夫だったかなあ。お姉さんとお好み焼きの味が忘れられない。
穴子寿司の青辰(あおたつ)というお店もなくなったと聞いた。良い穴子が仕入れられなかったら休む。出されてすぐ食べないと、おしゃべりはしめらないけど、海苔がしめるので、早く食べろと言われるらしい。めっちゃ美味しかったわ。
もしかしたらと思って「新開地 美丁」で検索をかけたら、その流れをくむお店ができているようだ。味は一緒らしい。
今度、絶対行くぞ!待っててね。その節は、よろしくね。